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AWSの生成AI「Amazon Bedrock」とは?機能・使い方・料金を解説

AWSはクラウドサービスとして高い人気を誇り、300を超えるサービスが提供されています。近年、AI技術の進展に伴い、「Amazon Bedrock」という生成AIサービスが登場しましたが、「Amazon Bedrockは何に使えるのか」「どのように利用するのか」などの疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。

そこで今回は、Amazon Bedrockの概要や、できること、選択できる基盤モデル(FM)、利用方法、料金体系をわかりやすく解説します。

この記事をおすすめする人
  • クラウドサービスを活用した業務効率化を検討している経営者の方
  • 複数のAIモデルを比較検討している研究開発部門の方
  • 自社データを使ったAIモデルのカスタマイズを検討している方

AWSの生成AI「Amazon Bedrock」とは?

Amazon Bedrockとは、さまざまなAIモデルを手軽に利用・管理できるAWSが提供する生成AIサービスです。このサービスでは、外部の生成AIモデルにAPI経由でアクセスできる仕組みを提供しています。現在利用できるAIモデルは9種類(2025年5月時点)あり、目的に応じて使い分けることが可能です。

また、サーバーレス構成のインフラを管理する必要がないため、専門的な知識やスキルがなくても簡単にコンテンツを生成できる点が特徴です。

Amazon Bedrockでできること

Amazon Bedrockは、基盤モデル(FM:Foundation Model)を利用に加え、用途に応じたカスタマイズが可能です。
また、他のAWSサービスとの連携もスムーズに行えます。以下では、Amazon Bedrockでできることを解説します。

FM(基盤モデル)を利用できる

Amazon Bedrockでは、Amazon Titanのほか、JurassicやClaudeなど、9種類の基盤モデル(FM)を利用可能です。
それぞれに特徴や得意分野があり、目的に応じて選択できます。

モデルの追加や更新は随時行われているため、常に最新の情報を確認しておくことが大切です。どのモデルを使えばよいか迷った際は、Amazon Bedrockに備わっている「モデル評価機能」が役立ちます。

FMをカスタマイズできる

Amazon Bedrockでは、ノーコードで基盤モデルのカスタマイズが行えます。例えば、自社データをAmazon S3に保存することで、トレーニングデータや検証データを基にモデルの調整が可能です。

また、一部のモデルでは継続学習にも対応しており、業界特有の知識を学ばせることもできます。さらに、Knowledge Bases機能を使えば、外部データと連携したRAG(Retrieval-Augmented Generation)によって、より深い文脈理解や精度の高い回答が行えます。

AWSサービスと連携が可能

Amazon Bedrockは、AWSの各種サービスとスムーズに連携が可能です。例えば、Amazon S3やDynamoDBと連携することで、AIモデルへのデータ供給や出力の管理が容易になります。

さらに、API GatewayやLambda、SageMakerなどのサービスを組み合わせることで、より高度なAIシステムの構築も可能です。サーバーレスで運用できるので、保守にかかる負担を減らしながら、AWSが提供する高い信頼性やセキュリティもそのまま活かせます。

Amazon Bedrockで選択できるモデル

Amazon Bedrockでは、テキスト生成や対話、画像生成など目的別に最適化された基盤モデルを自由に選択できます。各モデルは、それぞれ特徴が異なるので、利用目的に合ったモデルを選ぶことが重要です。以下では、Amazon Bedrockで選択できるモデルを解説します。

Jurassic:テキスト生成

AI21 Labsが提供するJurassicは、テキスト生成に特化した基盤モデルで、要約や表の作成にも対応しています。
例えば、財務レポートの要約や商品レビューの分析、自然なQ&Aなどに活用されており、実務でも使いやすいモデルです。

さらに、多言語処理にも優れているので、海外展開を視野に入れたプロジェクトでも力を発揮します。

Claude:対話・質疑応答

Anthropicが開発したClaudeは、長文処理に優れた基盤モデルで、最大10万トークン(文章を読み取るときの文字や単語のかたまりの数)のコンテキストウィンドウに対応しています。対話や質疑応答、文書の要約などを得意としており、バーチャルアシスタントや、メール・データからの情報抽出といった活用例があります。

さらに、コーディング支援など技術的な分野でも利用されているモデルです。

Stable Diffusion XL:画像生成

Stable Diffusion XLは、Stability AIが提供する画像生成モデルで、テキストからクオリティが高い画像を生成できます
クリエイティブな用途に特化しており、短いプロンプトでも多彩な画像を出力できるのが特徴です。

このモデルは広告やゲーム向けの素材、ロゴ、デザインの作成など、幅広い分野で利用されています。

Amazon Titan:自然言語テキスト生成

Amazon Titanは、Amazonが開発した自然言語処理に特化した基盤モデルです。テキスト生成や要約、質問への回答など、文章を理解・生成するさまざまな処理に対応しています。また、ユーザーごとのデータを使ったカスタマイズにも対応しています。

このモデルは検索のサポートや業務用ドキュメントの作成、コード生成、書籍の要約など、幅広い場面で活用されています。

Llama 2:テキスト分析・翻訳

Llama 2は、Metaが提供する事前トレーニング済みの大規模言語モデルです。テキスト分析や感情分析、翻訳など、幅広い自然言語処理に対応しています。

モデルの規模は複数用意されており、パラメータ数はおよそ70億から700億にのぼります。そのため、文章の意味や文脈を深く捉えることができ、AIチャットや議事録の作成など、業務効率化にも活用されています。

Command:ビジネス向けテキスト生成

Commandは、Cohereが提供するビジネス向けの自然言語モデルです。コピーライティングやテキスト要約、対話、Q&Aなど、実務に近い用途に幅広く対応しています。

埋め込みモデルは、100言語以上に対応しており、多言語処理を得意としています。そのため、ユーザーによるプロンプトからの記事作成やビジネス文書の要約といった、多言語対応が求められる場面でも活用されています。特に、国際的なプロジェクトや多文化対応が求められる業務において、効果的なソリューションを提供します。

Amazon Bedrockの利用方法

Amazon Bedrockを利用するには、まずAWS公式サイト(https://aws.amazon.com/)でAWSアカウントを作成し、ログインします。初回利用時には、Amazon Bedrockの使用申請が必要でで、承認までに数時間~数日かかる場合があります。

すべてのモデルを利用できるリージョン(地域)としては、「us-east-1」または「us-east-2」がおすすめです。ここでは、「us-east-1」を例に解説します。 

また、利用方法には、「Playgroundsを使う」「SDKを使う」といった選択肢があります。Playgroundsはコード不要で、モデルの試用や動作確認に便利です。左側のナビゲーションにある「Playgrounds」メニューから、「Text」「Chat」「Image」の機能から選ぶことができます。以下では、PlaygroundsとSDKの2つの使い方を解説します。

Playgrounds:「Text」機能(テキスト生成)

「Text」機能では、単一のプロンプトに対してAIが回答を生成します。以下の手順で利用できます。

  1. 左側のメニューから「Playgrounds」を選び、「Text」をクリックします。
  2. 「Select model」でAIモデルの提供元(例:AnthropicやAI21 Labsなど)と使用するモデルを選択し、「Apply」をクリックします。
  3. 画面下部のプロンプト入力欄に、既定のプロンプトを選択するか、任意の内容を入力します。
  4. 「Run」をクリックすると、生成された結果が表示されます。

Playgrounds:「Chat」機能(チャット形式の対話)

「Chat」機能では、ChatGPTのようなチャット形式でAIと対話が可能です。以下の手順で利用します。

  1. 左側のメニューから「Playgrounds」を開き、「Chat」を選択します。
  2. 「Select model」でAIモデルの提供元と使用するモデルを指定し、「Apply」をクリックします。
  3. 「Add instructions」から「Update」を選ぶと初期設定が完了します。
  4. 画面下部の「Human:」入力欄に質問を入力すると、AIとのチャットが開始されます。

Playgrounds:「Image」機能(画像生成)

「Image」機能は、入力したテキスト(プロンプト)に応じてAIが画像を生成する機能です。利用するには、左側のメニューバーから「Playgrounds」を開き、「Image」を選択します。「Select model」では、AIモデルの提供元と使用するモデルを指定し、「Apply」をクリックします。

画像を生成するには、画面下部にある既定のプロンプトを選ぶか、任意のテキストを入力します。右側の「Configurations」では、画像の詳細設定も行えます。

準備が整ったら、「Run」をクリック。生成された画像は、プロンプトの上に表示されます。

SDK:使えるモデルを確認(Bedrock API)

Amazon Bedrockは、SDKからAPIを呼び出して利用することも可能です。利用可能なモデルを確認するには、Bedrock API を使用します。以下は、us-east-1リージョンで利用できるモデル一覧を取得する Python コードの一例です。

【コード例】

import boto3

# Bedrock APIのクライアントを作成(us-east-1 を使う)
bedrock = boto3.client(service_name='bedrock', region_name='us-east-1')

# モデル一覧を取得
bedrock.list_foundation_models()
# 結果を表示
print(response)

このコードを実行すると、指定したリージョンで利用可能な基盤モデル(FM)の一覧を取得できます。

SDK:モデルを使った推論(Bedrock Runtime API)

Amazon Bedrockでモデルを使って推論を行うには、Bedrock Runtime APIを利用します。ここでは、Titan Text Liteを例に、APIの使い方を紹介します。下記は、PythonでBedrock Runtime APIを使って推論を行うPythonコードの一例です。

【コード例】

import boto3
import json

#Bedrock Runtime API のクライアントを作成
brt = boto3.client(service_name='bedrock-runtime', region_name='us-east-1')

#AIに送るプロンプト(指示文)を用意
body = json.dumps({
    "inputText": "コーヒーの入れ方をわかりやすく教えてください。",
    "textGenerationConfig": {
        "maxTokenCount": 300,
        "temperature": 0.7,
        "topP": 0.9,
        "stopSequences": []
    }
})

#Titan Text Lite のモデルIDを指定
modelId = 'amazon.titan-text-lite-v1'

#実行して結果を取得
response = brt.invoke_model(
    modelId=modelId,
    body=body,
    accept='application/json',
    contentType='application/json'
)

#結果を表示
response_body = json.loads(response['body'].read())
print(response_body.get('results')[0].get('outputText'))

このコードを実行すると、指定したプロンプトに基づくモデルの出力結果が表示されます。必要に応じて、textGenerationConfig内のパラメータを調整することで、生成されるテキストの質をカスタマイズできます。

Amazon Bedrockの料金体系

Amazon Bedrockの料金体系は、2025年4月時点で「オンデマンド料金」「バッチモード」「プロビジョンド・スループット」「カスタマイズ」の4種類に分かれています。最新の料金情報は、AWS公式サイト(https://aws.amazon.com/jp/bedrock/pricing/)をご確認ください。以下では、それぞれの料金体系の概要を紹介します。

即時実行ベースで利用したい場合は「オンデマンド料金」

オンデマンド料金は、使った分だけ支払う従量課金制です。利用量が少ない企業や、検証段階での利用に適しています。テキスト系AIモデルでは、入力・出力のトークン数が課金の基準になります。

画像系AIモデルの場合は、生成される画像1枚ごとに料金が発生します。利用量が少ない企業や、検証段階での利用に適したプランです。

複数のリクエストを処理したい場合は「バッチモード」

バッチモードは、複数のリクエストをまとめて処理したい場合に適した料金プランです。こちらも従量課金制で、処理されたトークン数に応じて課金されます。

複数の入力プロンプトと応答を一括で処理できるので、実行効率が高く、コストの最適化にもつながります。

高頻度で生成AIを使う場合は「プロビジョンド・スループット」

プロビジョンド・スループットは、生成AIを高頻度で利用するケースに適した料金プランです。リソースを時間単位で確保できるので、高い可用性や安定性が求められる本番環境での運用に向いています。

契約期間は1ヶ月または6ヶ月から選べ、6ヶ月契約の方が割安に設定されています。このプランは、生成AIを頻繁に利用する企業に最適です。

FMを自社データに最適化したい場合は「カスタマイズ」

カスタマイズは、基盤モデル(FM)を自社データに合わせて最適化したい場合に向いている料金プランです。
ノーコードでの調整に対応しており、自社の業務や用語に合ったモデル精度が期待できます。

料金は、使用したトークン数とエポック数(学習データを何回くり返して学習するか)に基づいてモデルトレーニング料が加算されます。カスタマイズ済みモデルを使用する際は、プロビジョンド・スループットと同様に時間単位で課金されます。

まとめ

Amazon Bedrockとは、サーバーレスで複数の基盤モデルに簡単にアクセスできる、AWSの生成AIサービスです。2025年5月時点で9種類の基盤モデル(FM)を利用でき、テキスト生成や要約、検索支援、画像生成など幅広い用途に対応しています。

生成AIの導入を検討している企業にとって、Amazon Bedrockは、手軽にAI活用を始められるサービスとして注目されています。

この記事のまとめ
  • Amazon Bedrockとは、サーバーレス環境で複数の基盤モデルにアクセスできるAWSの生成AIサービス。
  • Amazon Titan、Jurassic、Claude、Stable Diffusion XLなど9種類の基盤モデルが利用可能。
  • 料金体系はオンデマンド料金、バッチモード、プロビジョンド・スループット、カスタマイズの4種類を提供。
記事の監修

代表取締役村越 聖人

代表取締役村越 聖人

2006年からエンジニアにてデジタル業界でのキャリアをスタート。
大小様々なWebシステム開発およびシステム運用保守を経験。

フルスタックエンジニアとして上流から下流工程まで一連の業務を担当するとともに、サーバー設計、構築、運用設計などのサーバー管理者業務も兼任。

近年は、顧客折衝を含む提案型営業からDMP絡みのデータ分析業務をはじめ、プロジェクトの全体統括・SEなど業務要件に合わせたポジショニングで顧客ニーズの最大化を図るサービス提案を実施。

新規事業で立ち上げた自社サービスにて、発明者として特許取得。

2019年5月 株式会社glorious future 設立。