機械学習を活用すると、パターンや規則性に沿った分析ができます。機械学習には「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」があり、それぞれ得意とする分析方法や特徴があります。
そこで今回は、機械学習の種類や代表的なアルゴリズム、適したAIの使い方、導入時の注意点を解説します。
機械学習の種類は主に3つ
AIの機械学習には、主に「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」の3種類があります。
ここからは、3種類の機械学習の手法を解説します。

教師あり学習:正解データを用意した分析手法
教師あり学習とは、入力データと正解データが準備された状態で学習を行う手法です。
「教師」となる正解データがあるので、分析結果のゴールが明確な点が特徴です。
教師あり学習は、大きく分けて「回帰」と「分類」の2種類の学習タイプがあり、それぞれの違いは以下の通りです。
回帰 | ・連続した数値を予測するための手法 ・株価や気温の予測に用いる |
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分類 | ・データがどのカテゴリに属するかを予測する手法 ・スパムメールの判別や画像認識に活用される |
教師なし学習:正解がないデータのパターンを発見する手法
教師なし学習は、正解データがなく、AIが独自にデータ内のパターンを発見する手法です。
教師なし学習の主な手法には、「クラスタリング」「次元削減」があります。
クラスタリング | 類似したデータ同士をグループ分けし、隠れたパターンを見つける手法。 |
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次元削減 | 大量のデータから特徴を抽出し、より扱いやすい指標にまとめる手法。 |
教師なし学習とディープラーニング(Deep Learning:深層学習)を組み合わせることで、より高度なパターン認識にも応用できます。
強化学習:報酬を用意して行動を最適化する手法
AIの行動の良し悪しを設定し、良い行動を行ったときに報酬を与えることで、AIは多く報酬を貰える行動をするようになります。
強化学習では、AI自身が最も望ましい報酬を得られる行動を試行錯誤しながら学んでいきます。
強化学習では、正解データが与えられず、行動ごとに設定された報酬で最適な行動を見出します。
機械学習に使用される主な手法12選
機械学習の手法は数多く存在し、問題の種類やデータの特徴に応じて使い分けられています。以下では、実際のデータ分析やパターン認識に広く利用されている、代表的な12種類の手法を紹介します。
- サポートベクターマシン:クラスを2つに分類する
- ロジスティック回帰:特定の事象の発生確率を計算
- 決定木:条件分岐で分類する
- 線形回帰:説明変数に基づいて目的変数を予測
- ナイーブベイズ:高確率ものを推定結果として出力
- ランダムフォレスト:決定木を複数使用して高性能モデルを作成
- ニューラルネットワーク:脳を模した方法でデータを処理
- 近傍法:近い属性のデータを同グループに分類
- アダブースト:弱い分類器を組み合わせて強力な分類器を構築
- 階層型クラスタリング:似たサンプルをグルーピング
- 主成分分析:多次元のデータの特徴を抽出・可視化
- k-means:クラスタの重心とデータポイントの距離の二乗和を最小化
サポートベクターマシン:クラスを2つに分類する
サポートベクターマシンは、教師あり学習の手法のひとつです。主に、クラスを2つに分類する際に用いられます。
少ないデータでも高い精度で識別が可能で、分類だけでなく回帰にも使用できる点が特徴です。
ロジスティック回帰:特定の事象の発生確率を計算
ロジスティック回帰は、教師あり学習の一種で、入力データから特定の事象が発生する確率を算出することで、分類を行います。
医療やマーケティングなど、さまざまな分野で広く活用されています。
決定木:条件分岐で分類する
決定木は教師あり学習の手法で、回帰と分類の両方に利用されます。
データの特徴に基づいて条件分岐を行い、分類を行う「分類木」と数値予測を行う「回帰木」の2種類があります。
データの意思決定の過程を視覚的に表現できるため、理解しやすい点がメリットです。
線形回帰:説明変数に基づいて目的変数を予測
線形回帰は、説明変数に基づいて目的変数を予測します。
連続した数値の予測に優れており、結果もわかりやすい点が特徴です。
売上予測や経済指標の分析など、さまざまな分野で活用されています。線形回帰は、教師あり学習に分類されます。
ナイーブベイズ:高確率ものを推定結果として出力
ナイーブベイズは教師あり学習の手法の1つで、特定の事象が発生する確率を計算し、最も確率の高い結果を推定します。
計算速度が速く、膨大なデータに対応できる点が特徴です。主に分類やスパム検出などに用いられています。
ランダムフォレスト:決定木を複数使用して高性能モデルを作成
ランダムフォレストは、複数の決定木を組み合わせた教師あり学習の手法です。
決定木が個別に予測を行い、その結果を多数決で統合することで、回答を出力します。
この手法は、分類や回帰のタスクで高い予測精度があり、複雑なデータ解析などに活用されています。
ニューラルネットワーク:脳を模した方法でデータを処理
ニューラルネットワークは、教師あり学習の枠組みで利用される手法で、脳の神経回路を模倣してデータを処理します。
入力層と出力層の間に中間層を配置することで、非線形な複雑なパターンや特徴を抽出できます。
ニューラルネットワークは、回帰にも分類にも対応します。
近傍法:近い属性のデータを同グループに分類
近傍法は、教師あり学習に属する手法で、近い属性のデータを同グループに分類・回帰します。
学習データ量が多くなると計算負荷が高まりますが、シンプルで直感的に理解できる点がメリットです。
アダブースト:弱い分類器を組み合わせて強力な分類器を構築
アダブーストは、複数の弱い分類器(予測精度が低いモデル)を組み合わせることで、全体として強力な分類器を構築する教師あり学習の手法です。
データを2つの値に分類して、間違いを行ったデータに対して重み付けを行い、次の学習で改善する仕組みを採用しています。
この手法は、回帰と分類を目的としています。
階層型クラスタリング:似たサンプルをグルーピング
階層型クラスタリングは、教師なし学習のひとつです。個々のデータを比較しながら、似たサンプル同士を徐々にグループ化していきます。目的はクラスタリングで、データの構造を階層的に可視化できるため、各クラスタの関係性やパターンが直感的に理解できます。
主成分分析:多次元のデータの特徴を抽出・可視化
主成分分析は教師なし学習の次元削減手法で、複数の説明変数をより少ない指標に要約することを目的としています。
この手法では、多次元データから重要な特徴を抽出し、可視化します。これにより、データのパターン認識や相関関係の把握に役立ちます。
k-means:クラスタの重心とデータポイントの距離の二乗和を最小化
k-meansは、教師なし学習におけるクラスタリング手法のひとつで、各クラスタの重心を求め、データポイントとの距離の二乗和が最小になるようにクラスタを形成します。シンプルで実行速度が速く、拡張性が高い点がメリットです。主に、ビッグデータの解析などで活用されています。
機械学習の選び方
機械学習の手法は多岐にわたるため、目的や条件に応じて適切な手法を選ぶことが重要です。以下では、計算時間や利用目的、予測精度の観点から、効果的な手法の選び方について解説します。
計算時間が短いものを選ぶ
短期間で結果を出す必要がある場合、計算時間が短いものにしましょう。イーブベイズは、計算時間が短く、少ない時間で出力結果が得られます。全体像を短時間で把握できます。
利用目的に応じて選ぶ
機械学習の利用目的は、分類、予測、抽出です。目的に応じて各手法の得意分野を見極めることが重要です。
例えば、複雑なパターン認識にはニューラルネットワーク、シンプルな分類にはロジスティック回帰を選びましょう。
予測精度が高いものを選ぶ
機械学習の性能は、予測結果と実際の結果との差に現れます。ニューラルネットワークやランダムフォレスト、サポートベクターマシンは、予測精度が高いです。求める精度と目的に合わせて、最適な手法を選ぶことが大切です。

機械学習の注意点
機械学習を導入する際には、以下に注意する必要があります。
以下では、これらの機械学習の注意点について解説します。
結論の説明が難しい
機械学習の中には、結論の説明が難しい手法もあります。特に、ニューラルネットワークのような複雑な手法は、出力結果を人間が直感的に理解するのは難しいです。結論の説明が難しい問題は、強化学習などの最新の手法でも多く見られます。
入力の次元数(説明変数の数)で難易度が上がる
入力データの次元数が増加すると、モデルの学習が難しくなります。難易度が上がると、学習時間が長くなり、過剰なデータ処理が必要になります。予測の精度や実用性に影響を及ぼす場合があります。
過学習と未学習が起こる
訓練用データが不足している場合、過学習が発生しやすいです。過学習とは、訓練用データには高精度な予測ができるものの、未知のデータに対しては正確な予測ができない現象です。
また、十分な訓練が行われない場合、未学習の状態に陥ることがあります。未学習とは、データに対してモデルが学習できていない状態です。未学習を防ぐには、適切なデータ量と学習時間にし、モデルの最適化を行いましょう。
まとめ
今回は、機械学習の種類(教師あり学習・教師なし学習・強化学習)や代表的なアルゴリズム、適したAIの使い方、導入時の注意点を解説しました。
機械学習を導入する際には、学習手法の特徴や利用目的、予測精度を正しく理解し、適切なアルゴリズムを選ぶことが重要です。また、機械学習の分野は日々進化しているため、最新情報をキャッチアップしましょう。