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Agentic RAGとは?通常のRAGとの違いから読み解く次世代AIの活用法

「RAGを導入したが、複雑な質問には対応できない」
「複数のシステムをまたいだ情報収集を自動化したい」
――RAG活用が進む中で、こうした次のステージの課題を感じ始めている企業担当者の方も増えてきているのではないでしょうか。

その解決策として注目されているのが「Agentic RAG」です。通常のRAGが「質問に対して1回検索して回答する」のに対し、Agentic RAGはAIが自律的に複数のステップを踏みながら、より複雑なタスクを処理できる技術です。RAGの進化系として、企業のAI活用を一段階引き上げる技術として急速に注目が高まっています。

本記事では、Agentic RAGの基本概念から通常のRAGとの違い、活用シーン、企業導入のポイントまでを網羅的に解説します。「自社にAgentic RAGが必要かどうか」を判断するための材料としてお役立てください。

この記事をおすすめする人
  • RAGをすでに導入済みで、さらなる精度向上・機能拡張を検討している方
  • 複雑な業務タスクのAI自動化に興味を持っているIT担当者・経営者の方
  • Agentic RAGという言葉を聞いたことがあり、通常のRAGとの違いを正確に理解したい方

Agentic RAGとは?基本概念をわかりやすく解説

Agentic RAGは、従来のRAGが持つ「検索して答える」という枠組みを大きく超えた、次世代のAI技術です。まずは基本的な概念から整理していきましょう。

Agentic RAGの定義

Agentic RAGとは、AIが自律的に思考し行動する「エージェント」の能力と、外部知識を検索して回答を生成する「RAG」を統合した次世代のAIアーキテクチャです。

従来のRAGが「質問を受け取る→検索する→回答する」という一方向の処理だったのに対し、Agentic RAGはAI自らが「計画し・行動し・結果を評価し・修正する」というサイクルを自律的に回します。これにより、1回の検索では対応できなかった複雑で多面的なタスクを処理できるようになります。

RAGの詳しい仕組みについては、「RAG(検索拡張生成)とは?仕組みと活用方法を徹底解説」をあわせてご覧ください。

「エージェント」とは何か|AIが自律的に動くとはどういうことか

AIにおける「エージェント」とは、単に指示を待つプログラムではありません。与えられた目標を達成するために、自ら最適な手段を考え・判断し・行動する主体です。

具体的には以下の4つの能力を持つことを指します。

  • 目標設定:最終的なゴールを理解し、そこに至るまでの中間目標を自分で設定する
  • 計画立案:目標を達成するための具体的なステップと手順を自ら考え出す
  • ツール利用:データベース検索・Web APIの実行・計算など、必要なツールを自ら選択して使用する
  • 自己評価と修正:行動結果を評価し、目標達成に不十分であれば計画や行動を修正する

エージェントの能力

具体的な行動例

目標設定

「最新の市場動向レポートを作成する」という目標を理解する

計画立案

①関連キーワードでWeb検索

②社内売上データをDBから取得

③両者を統合して分析

④レポート形式で要約、という手順を自ら設計する

ツール利用

Web検索API・SQLクエリ実行ツール・データ分析ライブラリを順次呼び出す

自己評価と修正

「検索結果だけでは情報が古い」と判断し別の情報源を追加で調査する

人間に例えるなら、「質問されたら答えるだけのスタッフ」から「目標を与えれば自分で段取りを組んで仕事を完結させるプロフェッショナル」への進化といえます。

Agentic RAGが注目される背景

従来のRAGは社内情報への正確なアクセスを実現した画期的な技術ですが、複雑なビジネス課題への対応には限界がありました。企業のAI活用が成熟するにつれ、より高度なタスクを自動化したいというニーズが高まり、Agentic RAGへの注目が急速に集まっています。

従来のRAGが抱える課題

Agentic RAGによる解決策

1回の検索への依存

検索結果が不十分な場合AIが自ら判断して追加検索や別アプローチでの再検索を行う

静的な情報取得プロセス

質問の意図を深く理解し動的に複数の情報源を組み合わせて最適な回答を導き出す

複雑な推論能力の限界

単純な情報提供に留まらず複数の情報を比較・分析・統合して深い洞察を含む回答を生成する

通常のRAGとAgentic RAGの違いを徹底比較

Agentic RAGと通常のRAGは、どちらも外部情報を参照して回答を生成する技術ですが、その動作原理は根本的に異なります。仕組みと対応できるタスクの2つの軸から違いを整理します。

仕組みの違い|「1回の検索」vs「自律的な複数ステップ」

最大の違いは、問題解決に至るまでのプロセスです。

通常のRAGは「質問を受け取る→検索する→回答する」という直線的な一方向のプロセスです。シンプルで処理が速い反面、1回の検索で情報が不足していても、それ以上の追加調査は行いません。

対してAgentic RAGは、目標達成まで何度も思考と行動を繰り返す循環的なプロセスを持ちます。

通常のRAGの処理フロー
  1. ユーザーの質問を受け取る
  2. 関連情報を検索する
  3. 検索結果を基に回答を生成する
Agentic RAGの処理フロー
  1. ユーザーの質問(目標)を受け取る
  2. 目標達成のための計画を立てる
  3. 計画に基づき情報検索やツール利用を行う
  4. 得られた結果を評価する
  5. 目標未達成の場合は計画を修正し3に戻る
  6. 最終的な回答を生成する

この「評価して修正するループ」こそが、Agentic RAGが複雑なタスクに対応できる理由です。

回答精度と対応できるタスクの違い

プロセスの違いは、対応できるタスクの範囲に直接影響します。通常のRAGは単一の事実に基づいた質問への回答を得意とする一方、Agentic RAGは複数の情報源を組み合わせた調査・分析・レポート作成といった高度な知的作業をこなせます。

 

対応できるタスクの例

通常のRAG

「製品Aの使い方の手順を教えてください」「〇〇の申請方法は?」など単純な質問応答

Agentic RAG

「競合A社とB社の直近3年間の財務状況を比較し当社戦略への示唆をまとめてください」など複合的な分析・調査タスク

比較表|一目でわかる通常RAG vs Agentic RAG

比較項目

通常のRAG

Agentic RAG

プロセス

静的・直線的(検索→生成)

動的・循環的(計画→行動→評価→修正)

思考能力

限定的

自律的な推論・意思決定

情報源

主に単一の知識ベース

複数の知識ベース・DB・APIを横断

ツール利用

基本的に利用しない

外部ツールを積極的に活用

得意なタスク

単純な質問応答・要約

複雑な調査・分析・レポート作成

回答の質

検索結果の質に大きく依存

自己修正によりより網羅的で信頼性が高い

コスト

比較的低い

複数回のLLMコールにより高くなる傾向

処理速度

速い

思考プロセスを含むため遅くなる傾向

コストと処理速度の面では通常のRAGに分があります。Agentic RAGは高度なタスクへの対応力と引き換えに、処理コストが増加する点は導入前に考慮すべきポイントです。

Agentic RAGの仕組み|自律的に動くAIの処理フロー

Agentic RAGはどのようにして自律的な動作を実現しているのでしょうか。内部的な処理フローを3つのステップに分けて解説します。

タスクの分解と計画立案

最初のステップとして、エージェントはユーザーから与えられた複雑なタスクを、実行可能な小さなサブタスクに分解します。そして各サブタスクをどのような順番で、どのツールを使って解決するかの全体計画を立てます。

優秀なプロジェクトマネージャーが最初にWBS(作業分解構成図)を作成するプロセスに近いイメージです。この計画立案の質が、その後の処理全体の精度を左右します。

複数ツール・データソースの横断検索

計画が立案されると、エージェントは各サブタスクの解決に最適なツールやデータソースを自ら選択して行動を開始します。通常のRAGが単一の知識ベースしか参照できないのに対し、Agentic RAGは状況に応じて情報源を使い分けられる点が大きな強みです。

  • 最新のニュースが必要な場合 → Web検索API
  • 社内の売上データが必要な場合 → SQLデータベース
  • 製品マニュアルの情報が必要な場合 → ベクトルデータベース

複数の情報源を横断的に活用することで、単一の検索では到達できなかった網羅的な情報収集が可能になります。

結果の評価と自己修正|品質を担保する仕組み

行動によって得られた中間結果を、エージェントは都度評価します。「情報は十分か」「目標達成に近づいているか」「矛盾はないか」という観点で自己検証を行い、不備があると判断すれば計画を修正して再行動に移ります。この「評価と修正」のループこそが、最終的な回答品質を高める核心的な仕組みです。

処理フロー

AIエージェントの思考(例)

1. 計画立案

「競合分析レポート作成」→「まずWebサイトを調査し次に財務データをDBで確認しよう」と計画する

2. 行動

Web検索APIを実行し競合サイトの情報を取得する

3. 評価

「Webサイトの情報だけでは具体的な数値データが不足している」と判断する

4. 修正・再行動

計画を修正しSQL実行ツールを呼び出して財務データベースにアクセスする

5. 統合・生成

WebサイトとDBの情報を統合し最終的なレポートを生成する

通常のRAGでは「検索結果が不十分でも1つの回答を返すだけ」で終わっていた処理が、Agentic RAGでは「不十分と判断したら自ら追加調査を行い、満足のいく回答が得られるまでループを繰り返す」という動作に変わります。この違いが、複雑なビジネスタスクへの対応力を飛躍的に高めています。

Agentic RAGで実現できること|活用シーン

Agentic RAGの真価は、通常のRAGでは対応が難しかった複雑なビジネスタスクを自律的にこなせる点にあります。具体的な活用シーンを見ていきましょう。

複雑なレポート作成・調査業務の自動化

複数の情報源からデータを収集し、分析・統合してレポートを作成するような調査業務を自動化できます。例えば「競合他社3社の最新動向をまとめたレポートを作成して」という指示に対し、Web検索・社内データベース・過去の分析資料を横断的に調査した上で、構造化されたレポートを自律的に生成します。

担当者がこれまで数時間かけて行っていた情報収集と整理の作業をAIが代行することで、より創造的な業務に集中できる環境が整います。

複数システムをまたいだ情報収集と分析

社内に散在する複数のシステムを横断的に検索し、必要な情報をまとめて提示できます。「顧客Aに関する過去の取引履歴と関連する問い合わせ内容をすべてリストアップして」といった指示に対し、CRM・ERP・ナレッジベースを自律的に横断して情報を収集・統合します。

これまでは複数のシステムを個別に開いて情報を手動でまとめていた作業が、1つの指示で完結するようになります。

カスタマーサポートの高度化

顧客からの複雑な問い合わせに対し、FAQ・マニュアル・過去の対応履歴など複数の情報源を瞬時に調査します。単純な情報検索にとどまらず、顧客の状況を多角的に分析した上で個別の状況に最適化された解決策を提示できるため、対応品質と顧客満足度を同時に高めることができます。

法務・コンプライアンス業務への活用

膨大な契約書・判例・法規制文書の中から関連する条項やリスクを自動で洗い出します。契約書レビューや新しい規制への対応策検討など、高度な専門性と膨大な文書処理が求められる法務業務を強力に支援します。

以下の表で活用シーンを部門別に整理します。

活用シーン

解決できる課題

具体的なタスク例

経営企画

市場調査や競合分析に時間がかかる

複数社の決算情報と市場ニュースを自動収集・比較分析しSWOT分析レポートを作成する

営業

顧客提案資料の作成が煩雑

顧客情報(CRM)と製品情報(DB)を基に個別顧客に最適化された提案書ドラフトを自動生成する

開発

技術的な問題解決に時間がかかる

社内技術ドキュメントと外部技術情報を横断検索しエラー解決のためのコードスニペットを提示する

法務

膨大な文書の確認に工数がかかる

契約書データベースから類似条項やリスク箇所を自動抽出し法務担当者のレビューを支援する

Agentic RAG導入のポイントと注意点

Agentic RAGは強力な技術ですが、高度な分だけ導入には慎重な計画と段階的なアプローチが求められます。成功のために押さえておくべき4つのポイントを解説します。

通常のRAGから始めるべき理由

Agentic RAGの構築をいきなり目指すのではなく、まず通常のRAGシステムから始めることを強く推奨します。通常のRAGを構築・運用する中で、以下の重要な基盤を固めることができます。

  • データの前処理やベクトル化のノウハウ蓄積
  • 知識ベースの品質管理体制の構築
  • LLMの基本的なプロンプトエンジニアリングの習熟

これらの基盤があってこそ、Agentic RAGの高度な機能を安定して活かせます。基盤なしにAgentic RAGを導入しようとすると、問題発生時の原因特定が難しくなり、運用コストが跳ね上がるリスクがあります。

導入に必要な技術要件と準備

Agentic RAGの導入には、通常のRAGに加えていくつかの技術要素が必要です。事前に自社で準備できるかを確認しておきましょう。

技術要素

目的

具体例

エージェント実行環境

エージェントの思考と行動のループを管理する

LangChain Agents・LlamaIndex

ツール群(APIs)

エージェントが外部と連携するためのインターフェース

社内DBへの接続API・Web検索API

監視・ログ基盤

エージェントの動作を可視化し問題を追跡する

LangSmith・専用ログ収集ツール

コスト管理

LLMのAPIコール回数を監視しコストを制御する

API利用量モニタリングツール

社内に専門エンジニアがいない場合は、これらの技術要件を満たした上でサポートを提供できるベンダーへの相談が現実的な選択肢です。

精度管理とハルシネーション対策

Agentic RAGは自己修正機能によりハルシネーションを大幅に抑制しますが、完全に防げるわけではありません。エージェントが複数のステップを経て回答を生成する分、誤りが連鎖するリスクもあります。

以下の対策を運用に組み込むことが重要です
  • エージェントの思考プロセスをログで追跡し、なぜその回答に至ったかを人間が検証できる仕組みを構築する
  • 最終的なアウトプットは人間がレビューする運用を徹底する
  • 回答精度を定期的にモニタリングし、問題が検出された場合は迅速に修正できる体制を整える

セキュリティとガバナンスの考え方

エージェントが外部ツールやデータベースを自律的に操作できるようになるため、通常のRAGと比較してセキュリティリスクが高まります。特に注意すべきは「プロンプトインジェクション」と呼ばれる、悪意のある指示によってエージェントが意図しない動作をさせられるリスクです。

以下の原則を設計段階から組み込むことが不可欠です
  • 最小権限の原則:エージェントに与えるシステムへのアクセス権限を必要最小限に留める
  • 操作の監視:エージェントが実行した操作をすべてログに記録し不正な動作を検知できる仕組みを設ける
  • 人間による承認フロー:重要な操作や外部システムへの書き込みには人間の承認を必須とする

まとめ|Agentic RAGは自社に必要か?導入判断のポイント

Agentic RAGはAI活用の可能性を大きく広げる革新的な技術ですが、すべての企業にとって最適解とは限りません。導入を検討する前に、自社の課題や環境と照らし合わせた冷静な判断が重要です。

導入前に確認すべき3つの問い

以下の3つの問いに「はい」と答えられるかを確認してみてください。これらはAgentic RAGが真価を発揮するための前提条件となります。

確認すべき問い

「はい」の場合

「いいえ」の場合

解決したい課題は単一の情報源では完結しない複雑なものか?

複数のDBやドキュメントを横断して分析する必要があり導入効果が高い可能性がある

まずは通常のRAGで特定の知識ベースからの応答精度を高めることに注力すべき

AIが利用できる構造化・非構造化データやAPIが複数存在するか?

エージェントが活用できるツールが豊富で多様なタスクを実行できる環境が整っている

データソースが限定的でエージェントの能力を十分に活かせない可能性がある

通常のRAGと比較してコストと処理時間の増加を許容できるか?

回答の質の高さや業務削減効果をコスト増より重視できる場合に適している

リアルタイムの高速応答が必須または厳格なコスト管理が求められる場合には不向き

3つすべてに「はい」と答えられる場合はAgentic RAGの導入効果が高い可能性があります。一方で「いいえ」が多い場合は、まず通常のRAGから始めてステップアップしていくアプローチが現実的です。

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記事の監修

代表取締役村越 聖人

代表取締役村越 聖人

2006年からエンジニアにてデジタル業界でのキャリアをスタート。
大小様々なWebシステム開発およびシステム運用保守を経験。

フルスタックエンジニアとして上流から下流工程まで一連の業務を担当するとともに、サーバー設計、構築、運用設計などのサーバー管理者業務も兼任。

近年は、顧客折衝を含む提案型営業からDMP絡みのデータ分析業務をはじめ、プロジェクトの全体統括・SEなど業務要件に合わせたポジショニングで顧客ニーズの最大化を図るサービス提案を実施。

新規事業で立ち上げた自社サービスにて、発明者として特許取得。

2019年5月 株式会社glorious future 設立。