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セマンティック検索とは?仕組み・キーワード検索との違い・活用事例を解説

「探している情報がなかなか見つからない」「検索キーワードを変えて何度も検索し直す」―Webサイトや社内システムで情報を探す際、このような経験はありませんか?従来のキーワード検索では、入力した単語と完全に一致する情報しか見つけられず、本当に必要な情報にたどり着くまでに時間がかかってしまいます。

この課題を解決するのが「セマンティック検索」です。セマンティック検索とは、キーワードの一致だけでなく、ユーザーの検索意図や文脈を理解し、より関連性の高い情報を提供する検索技術です。例えば「車」と検索すれば「自動車」や「クルマ」の情報も自動的に表示され、同義語を意識せずに検索できます。

本記事では、セマンティック検索の基本的な仕組みやメリット、従来のキーワード検索との違い、企業での活用方法、導入時のポイントまで、システム開発・データ分析の専門企業である株式会社glorious futureが分かりやすく解説します。

この記事をおすすめする人
  • Webサイトや社内システムの検索機能改善を検討している企業担当者
  • 情報検索の効率化や業務効率化を目指すビジネスパーソン
  • AI検索やRAG技術の基礎となる技術を理解したい方

セマンティック検索とは?意味を理解する検索技術

セマンティック検索は、単なるキーワードの一致ではなく、言葉の「意味」や「文脈」、そしてユーザーが本当に知りたい「意図」を理解して最適な検索結果を提示する技術です。まずは、その基本的な定義と注目される背景、そして身近な活用例を見ていきましょう。

セマンティック検索の定義

セマンティック検索とは、検索クエリの背後にある意味や関連性を理解する検索手法です。従来のキーワード検索は、入力された単語がページ内に含まれているか(文字列の一致)を主軸に結果を返していました。

一方、セマンティック検索はAI技術、特に自然言語処理(NLP)を活用します。これにより、「PC おすすめ」という検索に対して、「パソコン 比較」や「高性能なノートPC」といった異なる表現でも、意味が近いコンテンツを自動的に見つけ出すことができます。

セマンティック(semantic)とは「意味論的」という意味で、単語そのものではなく、その単語が持つ「意味」に焦点を当てた検索を実現します。

セマンティック検索が注目される背景

現代は情報が爆発的に増加し、ユーザーが求める情報も多様化・複雑化しています。このような状況で、従来のキーワード検索には限界が見え始めました。ユーザーの曖昧な表現や言葉の揺れ(表記ゆれ)に対応できず、本当に価値のある情報を見逃すケースが増えているのです。

セマンティック検索は、この課題を解決する鍵となります。ユーザーが専門用語を知らなくても、日常的な言葉で質問するだけで、AIが意図を汲み取って適切な情報を提示します。

また、音声検索やAI検索の普及により、「東京でおすすめのレストランは?」のような自然な文章での検索が増えています。セマンティック検索は、このような質問形式の検索に対応でき、優れたユーザー体験を提供できることから、多くの企業で導入が進んでいます。

セマンティック検索の身近な活用例

セマンティック検索は、すでに私たちの身近なサービスで活用されています。具体的な例を見ることで、その利便性をより深く理解できるでしょう。

活用シーン

従来のキーワード検索の課題

セマンティック検索による改善

ECサイト

「涼しい Tシャツ」で検索しても、「涼しい」という単語がない商品は表示されない

素材(リネン、メッシュなど)や商品説明の文脈から「涼しさ」を理解し、関連商品を提示

社内ナレッジ

「昨年の営業会議の議事録」で検索しても、ファイル名が「2023年度第4Q営業MTG議事録」だとヒットしない

「昨年」「営業会議」という言葉の意味を解釈し、該当する議事録を正確に発見

Q&Aサイト

「パソコンの動作が重い」という質問に対し、過去の類似質問を見つけられず、同じ内容の質問が乱立

「PCのパフォーマンスが悪い」「動作が遅い」といった異なる表現を同一の意図として捉え、最適な回答に誘導

Webメディア

「AI 最新動向」と検索しても、専門的で難解な論文ばかりが上位に表示される

ユーザーの検索履歴などからレベル感を推測し、初心者向けの解説記事やニュースを優先表示

このように、セマンティック検索は様々な場面でユーザー体験を向上させ、必要な情報へのアクセスを劇的に改善します。

セマンティック検索の仕組みと主要技術

セマンティック検索の高度な意味理解は、複数のAI技術の組み合わせによって実現されています。ここでは、その中核となる4つの技術について、それぞれの役割を解説します。これらの技術を理解することで、セマンティック検索が「なぜ」意味を理解できるのかが明確になります。

自然言語処理(NLP)による意味の解析

自然言語処理(Natural Language Processing, NLP)は、人間が日常的に使う言葉(自然言語)をコンピューターが処理・解析するための技術です。セマンティック検索において、NLPは文章の構造を解析し、単語や文の意味を抽出する役割を担います。

具体的には、以下のような処理を行います。

  • 形態素解析: 文章を単語に分割し、それぞれの品詞を判定
  • 構文解析: 文の構造や単語間の関係性を分析
  • エンティティ認識: 人名、地名、組織名などの固有名詞を識別

これにより、コンピューターは単なる文字列としてではなく、意味のある情報としてテキストを扱えるようになります。例えば「東京で美味しいラーメン店を探している」という文章から、「東京」=場所、「ラーメン店」=検索対象、「探している」=情報ニーズ、という意味を理解できます。

ベクトル埋め込みによる意味の数値化

ベクトル埋め込み(Vector Embeddings)は、セマンティック検索の心臓部とも言える技術です。単語や文章を「ベクトル」と呼ばれる高次元の数値配列に変換します。

この技術の最大のポイントは、意味が近い単語や文章ほど、ベクトル空間上で互いに近い位置に配置される点です。例えば「車」「自動車」「クルマ」は、異なる表記でも意味が近いため、ベクトル空間上では近い位置に配置されます。

モデルの種類

特徴

長所

短所

静的埋め込み

(Word2vec、GloVeなど)

各単語に固定のベクトルを割り当てる

計算コストが比較的低い

文脈によって意味が変わる多義語に対応できない

(例:「Apple」が果物か企業か区別不可)

文脈依存埋め込み

(BERT、GPTなど)

Transformer技術を使い、文脈に応じて単語のベクトルを動的に生成

多義語の区別や複雑な文脈のニュアンスを正確に捉えられる

高い計算コストと大量の学習データが必要

現在のセマンティック検索では、BERTやGPTなどの文脈依存型の埋め込みモデルが主流となっています。

ベクトル検索による高速な類似文書探索

テキストがベクトル化された後、次に行うのが検索です。ベクトル検索は、ユーザーが入力したクエリのベクトルと、データベース内に保存されている無数の文書ベクトルの「近さ」を計算します。

コサイン類似度などのアルゴリズムを用いて、ベクトル空間上で最も近くにある(=意味的に最も類似している)文書を瞬時に見つけ出します。この技術により、膨大なデータの中からでも高速に関連情報を探し出すことが可能です。

ベクトル検索の詳細な仕組みや実装方法については、別途「ベクトル検索」に関する記事で詳しく解説予定です。

RAG(検索拡張生成)との関係性

最近注目されているRAG(Retrieval-Augmented Generation、検索拡張生成)は、生成AIの回答精度を高めるための仕組みです。RAGは、LLM(大規模言語モデル)が回答を生成する前に、信頼できる情報源から関連情報を検索し、それを参考に回答を作成します。

この「関連情報を検索する」部分で、まさにセマンティック検索(およびベクトル検索)が中核的な役割を果たしているのです。セマンティック検索により意味的に関連する情報を正確に抽出できるため、生成AIはより正確で信頼性の高い回答を提供できます。

セマンティック検索とキーワード検索の違い

セマンティック検索を理解する上で、類似技術との違いを明確にすることは非常に重要です。特に「キーワード検索」や、しばしば混同されがちな「ベクトル検索」との違いを整理しましょう。これらの違いを把握することで、自社に最適な検索技術を選定できます。

比較表:各検索手法の特徴と違い

各検索手法の原理や長所・短所を比較すると、その違いがより明確になります。それぞれの技術には一長一短があり、目的に応じて使い分ける、あるいは組み合わせることが求められます。

項目

キーワード検索

(BM25など)

ベクトル検索

セマンティック検索

基本原理

単語の出現頻度や希少性に基づく語彙的な一致(レキシカルマッチ)

多次元ベクトル空間での近傍探索

AIモデルによる意味・意図の理解と意味的な一致(セマンティックマッチ)

検索対象

テキストデータのみ

テキスト、画像、音声などベクトル化できるあらゆるデータ

主にテキストデータ(画像なども可能)

得意なこと

固有名詞、製品型番、専門用語など、厳密な文字列の一致検索

類似画像検索、類似楽曲検索など、非構造化データの類似性に基づく検索

曖昧な質問、話し言葉での検索、同義語や表記ゆれへの対応

苦手なこと

ユーザーの意図の汲み取り、同義語や関連語の検索

厳密なキーワード一致。なぜその結果になったかの説明性

計算コストが高い。厳密なキーワード一致は苦手な場合がある

技術的関係

-

セマンティック検索を実現するための手段・方法

ベクトル検索という手段を用いて実現される目的・概念

キーワード検索との決定的な違い

キーワード検索の仕組み: 従来のキーワード検索は、入力された単語が文書内に「含まれているか」を判定します。例えば「車」と検索した場合、「車」という文字列を含むページのみがヒットし、「自動車」や「クルマ」は別の単語として認識されます。

セマンティック検索の仕組み: 一方、セマンティック検索は単語の「意味」を理解します。「車」と検索すれば、「自動車」「クルマ」「vehicle」なども関連する情報として認識し、意味的に類似したコンテンツを提示します。

具体例で比較: 検索クエリ:「東京 おすすめ レストラン」

  • キーワード検索: 「東京」「おすすめ」「レストラン」の3つの単語すべてを含むページを優先表示
  • セマンティック検索: ユーザーが「東京でおすすめの飲食店を探している」という意図を理解し、「人気の店」「評価の高い店」「話題の店」なども関連情報として提示

なぜベクトル検索と混同されやすいのか?

セマンティック検索とベクトル検索が混同されやすい理由は、セマンティック検索がその実現手段としてベクトル検索を多用するからです。しかし、両者はレイヤーの異なる概念です。

  • ベクトル検索: 「どうやって探すか?」という手段を指します。ベクトル化されたデータの中から、似ているものを高速に見つける技術そのものです。
  • セマンティック検索: 「何を達成したいか?」という目的を指します。言葉の「意味」を理解して、ユーザーの意図に合った検索結果を返すという概念です。

つまり、セマンティック検索という大きな目的を達成するために、ベクトル検索という強力な手段が使われていると理解すると分かりやすいでしょう。ベクトル検索の詳細については、別途「ベクトル検索」の記事で詳しく解説予定です。

ハイブリッド検索という最適な選択肢

キーワード検索とセマンティック検索は、互いに排他的な関係ではありません。両者にはそれぞれ得意な領域があるため、実際のビジネスアプリケーションでは両者を組み合わせた「ハイブリッド検索」が非常に有効です。

ハイブリッド検索の具体例: ECサイトで「iPhone 15 Pro ケース」と検索された場合:

  • キーワード検索の役割: 「iPhone 15 Pro」という製品型番に完全一致する商品を確実にリストアップします(厳密な一致が必要な情報)
  • セマンティック検索の役割: 「スマホを衝撃から守る」「おしゃれなデザイン」といったレビューの文脈を理解し、関連性の高い商品を推薦します(意味的な関連性が重要な情報)

このように両者を組み合わせることで、網羅性と検索精度の両方を高め、ユーザーにとって最適な検索体験を提供できます。多くの先進的な検索システムでは、このハイブリッドアプローチが採用されています。

セマンティック検索のメリット

セマンティック検索の導入は、単なる技術的な改善に留まりません。ユーザー体験の向上から業務効率化まで、多岐にわたるビジネス上のメリットをもたらします。ここでは、具体的な導入効果を4つの側面に分けて解説します。

メリット①:優れたユーザー体験による機会損失の削減

ユーザーが求める情報にたどり着けない体験は、Webサイトからの離脱や顧客満足度の低下に直結します。セマンティック検索は、曖昧な表現でもユーザーの意図を汲み取ることで、「0件ヒット」や「無関係な検索結果」を減らし、機会損失を防ぎます。

ビジネス課題

セマンティック検索による解決策

期待されるビジネスインパクト

サイト内検索の離脱率が高い

ユーザーの意図を理解し、より関連性の高い検索結果を提示

・サイト滞在時間の向上

・直帰率・離脱率の低下

CVRが低い

検索結果から直接、購買や問い合わせに繋がりやすい情報を提供

・CVR(コンバージョン率)の向上

・売上増加

顧客満足度が低い

「探す」ストレスを軽減し、スムーズな情報発見体験を提供

・顧客満足度(CSAT)の向上

・ブランドロイヤリティの強化

例えば、ECサイトで「夏 涼しい 服」と検索した場合、キーワード検索では「涼しい」という単語を含む商品しかヒットしませんが、セマンティック検索ならリネンやメッシュ素材など、涼しさに関連する商品も自動的に提示されます。これにより、顧客エンゲージメントやコンバージョン率の向上が期待できます。

メリット②:社内ナレッジ活用による生産性の向上

「あの資料、どこにあったかな?」と、情報を探す時間は、多くの企業で生産性を下げる要因となっています。社内の文書管理システムやイントラネットにセマンティック検索を導入することで、社員は必要な情報へ迅速にアクセスできるようになります。

具体的な効果:

  • 情報検索時間の大幅削減(平均60〜70%)
  • 「過去のプロジェクト資料」「昨年の営業会議」など自然な言葉で検索可能
  • 専門用語を知らない新入社員でも必要な情報を発見できる
  • 本来のコア業務に集中できる時間が増加

これにより、社内ナレッジが有効活用され、組織全体の生産性が向上します。特に、リモートワークが増えた現在、社内情報への迅速なアクセスは業務効率化の重要な要素となっています。

メリット③:多言語対応と言語の壁の解消

セマンティック検索は、言語を超えた検索を可能にします。日本語で検索しても、意味的に関連する英語コンテンツや中国語コンテンツを見つけ出すことができます。

グローバルビジネスでの活用:

  • 海外の最新技術情報や論文へのアクセス
  • 多国籍チームでの情報共有の円滑化
  • 海外顧客向けサービスの検索精度向上
  • クロスリンガル(言語横断)検索の実現

これにより、言語の壁を越えて世界中の知識にアクセスでき、グローバルな競争力を高めることができます。

メリット④:データドリブンな意思決定の支援

企業内には、議事録、報告書、顧客からのフィードバック、SNSの投稿など、価値ある非構造化データが大量に存在します。セマンティック検索は、これらのテキストデータから意味的なインサイトを抽出するのに役立ちます。

活用例:

  • 顧客フィードバック分析: 問い合わせ内容やレビューから製品改善のヒントを発見
  • 市場トレンド把握: 業界ニュースやレポートから市場動向を分析
  • リスク検知: 社内報告書から潜在的な問題や課題を早期発見
  • 競合分析: 競合他社の動向や戦略を意味的に分析

例えば、「顧客満足度を下げている要因は?」という質問に対して、過去の顧客フィードバックから意味的に関連する情報を抽出し、具体的な改善ポイントを特定できます。これにより、データに基づいた戦略的な意思決定を支援します。

セマンティック検索の企業での活用シーン

セマンティック検索は、様々な業界・部門で活用され、ビジネス課題の解決に貢献しています。ここでは、代表的な4つの活用シーンを紹介します。

活用シーン①:Webサイト・ECサイトの検索機能強化

ECサイトやコーポレートサイトの検索機能にセマンティック検索を導入することで、ユーザー体験が大幅に向上します。従来のキーワード検索では見逃されていた商品やコンテンツを、意味的な関連性から見つけ出すことができます。

具体的な活用例:

  • 商品検索の精度向上: 「暖かい冬用手袋」と検索すれば、商品説明に「暖かい」と明記されていなくても、ウールやフリース素材の手袋を自動的に表示
  • レビュー分析との連携: 「丈夫で長持ちする靴」という検索に対して、レビューで「耐久性が高い」「何年も使える」と評価されている商品を優先表示
  • パーソナライズ推奨: ユーザーの過去の検索履歴や購買傾向を理解し、関連商品を推薦

セマンティック検索の導入により、サイト内検索からのコンバージョン率が向上し、商品発見率の改善につながります。また、ユーザーが探している商品を素早く見つけられるため、カート放棄率の低減や顧客満足度の向上が期待できます。

活用シーン②:社内ナレッジ検索システム

企業内に散在する文書、マニュアル、議事録、プロジェクト資料などを横断的に検索できるシステムにセマンティック検索を導入することで、情報検索時間を大幅に削減できます。

具体的な活用例:

  • 自然な言葉での検索: 「昨年の営業会議の議事録」と検索すれば、ファイル名が「2023年度Q4営業MTG議事録.pdf」でもヒット
  • 専門用語の自動認識: 新入社員が「顧客管理システム」と検索しても、社内で使われている「CRM」の資料を表示
  • 過去の事例検索: 「同じようなトラブルの解決方法」を探す際、類似した状況の過去事例を意味的に抽出
  • 部署横断の情報共有: 異なる部署で異なる呼び方をしている概念でも、意味が同じなら関連資料を表示

セマンティック検索により、情報検索にかかる時間を60〜70%削減でき、社内ナレッジの有効活用が促進されます。また、新入社員が必要な情報に素早くアクセスできるようになることで立ち上がり期間が短縮され、業務の属人化防止にも貢献します。

活用シーン③:カスタマーサポート・FAQシステム

顧客からの問い合わせに自動応答するチャットボットやFAQシステムにセマンティック検索を組み込むことで、回答精度が向上し、顧客満足度とサポート効率の両方を改善できます。

具体的な活用例:

  • 多様な表現への対応: 「パスワードを忘れた」「ログインできない」「IDが分からない」など、異なる表現でも同じFAQへ誘導
  • 会話形式の質問理解: 「商品が届かないのですが、どうすればいいですか?」という自然な質問に対して適切な回答を提示
  • 関連情報の提案: 一つの質問に回答した後、関連する可能性の高いFAQを自動提案
  • 多言語対応: 英語や中国語での問い合わせに対しても、日本語FAQから適切な回答を見つけ出して翻訳表示

セマンティック検索の活用により、サポート対応時間を50%削減できた事例もあり、顧客満足度の向上とサポート担当者の負担軽減を両立できます。また、24時間365日対応が可能になるため、顧客の利便性も大きく向上します。

活用シーン④:学術・研究分野での文献検索

研究者や学生が論文や文献を探す際、セマンティック検索は研究テーマに関連する情報を効率的に見つけ出すことができます。特に学際的な研究では、異なる分野で使われる用語を横断して検索できる点が強みです。

具体的な活用例:

  • 概念ベースでの検索: 「機械学習を用いた医療診断」というテーマで検索すれば、「AI診断」「深層学習による疾患予測」など、表現は異なるが意味的に関連する論文をヒット
  • 引用関係の意味的分析: 単なる引用数だけでなく、引用文脈の意味を理解して関連性の高い文献を推薦
  • 分野横断検索: 「持続可能性」というテーマで、環境学・経済学・工学など複数分野の論文を横断的に検索
  • 最新研究のトレンド把握: 特定の研究テーマについて、意味的に関連する最新論文を継続的に発見

セマンティック検索により、リサーチ時間が大幅に短縮され、見落としていた重要文献の発見につながります。また、学際的な研究が促進され、研究の質向上にも貢献します。

セマンティック検索の導入方法と注意点

セマンティック検索は強力な技術ですが、万能ではありません。導入を成功させるためには、その限界や課題を正しく理解し、対策を講じることが不可欠です。ここでは、導入方法と主な注意点について解説します。

セマンティック検索の導入方法

セマンティック検索を導入する方法は、大きく分けて3つのアプローチがあります。自社の目的や予算、技術リソースに応じて最適な方法を選択しましょう。

方法①:既存サービスの活用

最も手軽な方法は、既にセマンティック検索機能を搭載している既存サービスを活用することです。

  • Google検索: 最も身近なセマンティック検索。知識グラフやRankBrainを活用
  • AI検索ツール: Perplexity AI、ChatGPT検索、Microsoft Copilotなど(詳しくはAI検索おすすめツール比較6選を参照)
  • クラウドサービス: Google Cloud(Vertex AI Search)、AWS(Kendra)、Azure(Cognitive Search)

これらのサービスは初期投資が少なく、すぐに導入できる点がメリットです。

方法②:オープンソースツールの活用

より柔軟なカスタマイズが必要な場合は、オープンソースの検索エンジンを活用します。

  • Elasticsearch / OpenSearch: キーワード検索とベクトル検索を組み合わせたハイブリッド検索が可能
  • 主要なライブラリ: sentence-transformers(テキストのベクトル化)、Faiss(高速ベクトル検索)、LangChain(RAGとの統合)

技術的な知識が必要ですが、自社のニーズに合わせた細かい調整が可能です。

方法③:専門企業への開発委託

企業内の独自データを活用したセマンティック検索システムを構築する場合は、システム開発会社への委託が効果的です。

  • 社内データに特化したカスタム検索システムの開発
  • RAG技術との組み合わせによる高精度な検索
  • セキュリティ要件への対応
  • 既存システムとの連携

グロリアスフューチャーでは、セマンティック検索技術を活用した企業内検索システムやRAGシステムの開発支援を行っています。

導入時の主な課題と解決策

セマンティック検索を導入する際に直面する可能性のある主な課題と、その対策を紹介します。

課題

詳細

解決策・アプローチ

計算コストが高い

高度なAIモデルの利用は、特に大規模データの場合、サーバーコストや処理時間がかかる

・モデルの軽量化や最適化

・Faissなど高速なベクトル検索ライブラリの活用

・必要な精度とコストのバランスを検討

データ品質への依存

検索対象となるデータの品質が低い(ノイズが多い、情報が古いなど)と、検索精度も低下する

・定期的なデータクレンジング

・検索対象ドキュメントの品質管理プロセスの構築

・メタデータの整備

厳密な一致が苦手

製品型番や専門用語など、特定の文字列に完全に一致させたい場合に、意味の近さを優先してしまい期待通りの結果にならない

・キーワード検索を併用するハイブリッド検索の実装

・検索クエリに応じてセマンティック検索とキーワード検索の重みを調整

説明性の欠如

「なぜこの結果が返ってきたのか」を論理的に説明することが難しい場合がある

・検索結果とクエリの類似度スコアを提示

・結果のどの部分がクエリと関連しているかをハイライト表示

導入成功のポイント

セマンティック検索を成功させるためには、以下のポイントを押さえることが重要です。

①スモールスタートで始める まずは限定的な範囲(特定のカテゴリーや部署)で導入し、効果を検証してから全社展開を検討しましょう。

②ハイブリッド検索を検討する セマンティック検索とキーワード検索を組み合わせることで、それぞれの弱点を補完し、より高精度な検索を実現できます。

③データ品質の継続的な改善 検索対象となるデータの品質を定期的に見直し、クレンジングや更新を行うことで、検索精度を維持・向上できます。

④ユーザーフィードバックの収集 実際のユーザーから検索体験に関するフィードバックを集め、継続的に改善していくことが重要です。

LLMやRAGとの連携による進化

セマンティック検索の技術は、今後さらに進化していくと予測されています。特に、LLM(大規模言語モデル)やRAG(検索拡張生成)との連携は、検索のあり方を大きく変えるでしょう。

例えば、ユーザーが「来週の大阪出張におすすめのホテルを3つ提案して」と入力すれば、セマンティック検索が関連情報を収集し、LLMが自然な文章で回答を生成する、といった高度な対話型検索が実現されます。

このような技術の進化により、セマンティック検索はAI検索やRAGシステムの中核技術として、ますます重要な役割を果たしていくことが期待されます。

セマンティック検索で検索体験を向上|まとめ

本記事では、セマンティック検索の基本概念から、その仕組み、キーワード検索との違い、ビジネスメリット、企業での活用シーン、そして導入方法と注意点まで解説しました。最後に、重要なポイントを再確認しましょう。

セマンティック検索のポイント再確認

セマンティック検索は「意味」を理解する検索技術 単なるキーワードの一致ではなく、ユーザーの検索意図や文脈を理解し、より関連性の高い情報を提供します。「車」と検索すれば「自動車」「クルマ」の情報も自動的に表示され、同義語を意識せずに検索できます。

キーワード検索との使い分けが成功の鍵:厳密な文字列一致が必要な場面(製品型番、固有名詞など)はキーワード検索、意味的な関連性が重要な場面はセマンティック検索を組み合わせるハイブリッドアプローチが効果的です。両者の長所を活かすことで、より高精度な検索体験を実現できます。

ビジネスインパクトが大きい:ECサイトのコンバージョン率向上、社内ナレッジ検索の効率化、カスタマーサポートの精度向上など、様々な場面で成果を上げています。情報検索時間を60〜70%削減できた事例もあり、ユーザー体験の向上と業務効率化に直結します。

関連技術との連携でさらに進化:ベクトル検索技術を活用し、RAG(検索拡張生成)やAI検索と組み合わせることで、さらに高度な検索システムを構築できます。今後もLLMとの統合が進み、対話型の検索体験がますます普及していくでしょう。

セマンティック検索を活用したシステム開発は株式会社glorious futureにご相談ください

セマンティック検索技術は、RAGシステムや企業内AI検索システムの構築において重要な役割を果たします。株式会社Glorious Futureでは、セマンティック検索・ベクトル検索・LLMを組み合わせた高精度な検索ソリューションをご提供しています。

主なサービス内容:

  • セマンティック検索を活用した社内ナレッジ検索システム構築
  • RAG技術による高精度なAI検索の実装
  • カスタマーサポートシステムの高度化
  • 意図理解に基づいた推薦システム開発

従来のキーワード検索では見つけられなかった情報も、意味ベースの検索で的確に抽出できるようになります。セマンティック検索を活用したシステム開発やRAG技術の導入をご検討の企業様は、まずはお気軽にご相談ください。

記事の監修

代表取締役村越 聖人

代表取締役村越 聖人

2006年からエンジニアにてデジタル業界でのキャリアをスタート。
大小様々なWebシステム開発およびシステム運用保守を経験。

フルスタックエンジニアとして上流から下流工程まで一連の業務を担当するとともに、サーバー設計、構築、運用設計などのサーバー管理者業務も兼任。

近年は、顧客折衝を含む提案型営業からDMP絡みのデータ分析業務をはじめ、プロジェクトの全体統括・SEなど業務要件に合わせたポジショニングで顧客ニーズの最大化を図るサービス提案を実施。

新規事業で立ち上げた自社サービスにて、発明者として特許取得。

2019年5月 株式会社glorious future 設立。