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システムとソフトウェアの違いは?開発・運用の流れや導入手順を解説

IT用語で混同されやすい言葉に「システム」と「ソフトウェア」があり、「システムとソフトウェアの違いは?」「導入するならどちらを選べばいい?」といった疑問を持っている方も多いのではないでしょうか?

一般的に、システムはハードウェアやネットワーク、データなどの複数の要素を統合した総合的な環境を指します。一方、ソフトウェアはコンピューター上で動くプログラムそのものを指します。それぞれの特性を理解し、それを活かした選択をすることが重要です。

そこで今回は、システムとソフトウェアの違いを明確にし、開発の流れや開発に関わる職種、導入時の判断基準を解説します。

この記事をおすすめする人
  • 新たにIT導入を検討しており、システムとソフトウェアの違いが知りたい方
  • 自社の業務改革に向けて最適な開発方法を模索している方
  • 開発費用や期間を抑えつつIT環境を整備したい方

システムとソフトウェアの違いは?

インターネット上で使われるルールである「システム」と、コンピューター上で動くプログラムを指す「ソフトウェア」には、以下のように、開発範囲や目的に違いがあります。

ここからは、システムとソフトウェアの違いを解説します。

システム:インターネット上で使用するルール

システムは、ソフトウェア・ハードウェア・ネットワークなどの構成要素が統合されて初めて機能する総合的な仕組みです。システム開発では、ハードウェアの選定やネットワーク設計、データベース構築などが主な作業となります。また、企業の業務フローの改善や企業の基幹システムの構築などもシステム開発の役割です。

さらに、システム開発は要件定義から運用・保守までのすべての工程を含むため、初期コストや開発期間、人的な負担が比較的大きくなる傾向があります。その他、システムを安定して使い続けるには、適切な保守体制の構築も不可欠です。

ソフトウェア:コンピューター上で動くプログラム

ソフトウェアとは、コンピューター上で動作するプログラムやコードを指します。これには、オペレーティングシステム(システムソフトウェア)や業務で使用するアプリケーション(アプリケーションソフトウェア)などが含まれます。ソフトウェアは、システムの一部として機能し、特定の目的やプログラムを実行するために設計されています。

ソフトウェア開発の主な対象は、新機能の追加やバグ修正といった特定のプログラム単位での改善や更新です。システム全体を構築するシステム開発とは異なり、ソフトウェア開発は比較的短期間かつ低コストで開始できる場合が多いのが特徴です。そのため、導入コストを抑えたい場合には有効な選択肢となります。

ただし、ソフトウェアの効果はシステム全体に及ぶわけではなく、限定的な影響にとどまることもあるため、その点を考慮した上で活用することが重要です。

システム開発とソフトウェア開発の流れ

システム開発とソフトウェア開発は、どちらも「要件定義」や「設計」「テスト」の工程が必要な点では共通していますが、開発の進め方や範囲に違いがあります。

ここからは、システム開発とソフトウェア開発の流れについて解説します。

システム開発の範囲:ハードウェアからネットワークまで

システム開発は、ハードウェアやデータベース、ネットワークなどを含む、コンピュータシステム全体が対象です。設計から運用・保守に至るまで、役割分担を明確にしながら、広い視野で計画を進めることが求められます。

以下に、システム開発の一般的な手法の流れを表にまとめました。

工程

主な内容

計画

目標やスケジュール・予算・リスクを明確化し、開発の方向性を定める

要件定義

業務全体を把握した上で、開発側とクライアントの間で認識のズレがないよう調整する

基本設計

システム全体の構造や各機能を整理し、全体像をつかめるよう設計する

詳細設計

実装レベルまで仕様を具体化し、プログラム開発に向けた準備を行う

実装

設計書をもとに、複数のチームやエンジニアが連携して開発を進める

テスト

単体テストから運用テストまで、段階的に品質管理を行い、システム全体の完成度を保証する

リリース

旧システムから新システムへの移行や、データの引き継ぎなどを実施し、運用を開始する

運用・保守

障害対応や機能追加などを行いながら、安定したシステム稼働を維持する運用体制を構築する

システム開発は、計画段階での目標設定やリスク管理、運用開始後の保守体制まで、すべての工程が連携して進める必要があります。上記の流れを理解することで、より効果的なシステム構築が可能となります。

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ソフトウェア開発の範囲:プログラム内部の設計と実装

ソフトウェア開発は、プログラムやモジュール単位での設計と実装を中心に行います。開発範囲が限定されているので、柔軟に修正や変更に対応しやすいのが特徴です。

また、ユーザーのニーズにあわせたカスタマイズが可能であり、特定の課題解決に特化した機能を迅速に提供することができます。

ソフトウェア開発の一般的な手法とその流れは、以下のようになります。

工程

主な内容

計画

ユーザーへのヒアリングを通して、課題や運用開始時期、予算などを把握し、開発の方向性を明確化する

要件定義

必要な機能やUI(ユーザーインターフェース)、セキュリティ要件を明確化し、要件定義書を作成する

基本設計

ユーザー視点で操作性やインターフェースの構成を検討し、基本的な設計の枠組みを構築する

詳細設計

開発者が実装しやすいように仕様を細分化し、プログラム構造を明確にする

実装

プログラミング言語の特徴に合わせた設計指針に従ってソースコードを記述し、将来の保守作業を考慮した実装を行う

テスト

単体テストから受け入れテストまでの各工程で不具合を洗い出し、修正を重ねて完成度を高める

リリース

リリース後はマニュアルや研修を準備し、ユーザーが自分たちで運用を進められる体制を整える

運用・保守

不具合への対応や機能の改善を続けながら、ユーザーの満足度向上を目指し、長期的にサポートする

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システム開発を担当する職種

システム開発とソフトウェア開発では、求められる知識や担当する領域が異なるので、関わる職種にも違いがあります。ここからは、先にシステム開発を担当する職種を解説します。

システムアーキテクト:システム全体の設計を担う提案者

システムアーキテクトは、システム全体の設計を担う職種です。システム開発プロジェクトの中心メンバーとして、初期段階からプロジェクトに関わります。

設計分野は、ハードウェア構成やネットワーク環境、セキュリティなど、さまざまな要素を総合的に検討しながら設計を進めます。

システムアーキテクトの仕事は、技術的な知識だけでなく、プロジェクトの目的やビジネスニーズを理解した上で、最適なシステム構成を提案・実現することが求められます。

データベース管理者:システム内のデータを守る専門職

データベース管理者は、システム内のデータの整合性を保ち、セキュリティリスクを最小化する役割を担います。必要に応じて他のエンジニアと協力しながら、新機能の設計や実装を行うこともあります。

この職種には、技術的な知識だけでなく業務全体を理解し、ビジネスニーズを踏まえたデータ管理が求められます。データの安全性と効率的な利用を両立することが、データベース管理者の使命です。

ネットワークエンジニア:ネットワークの設計を支える専門家

ネットワークエンジニアは、ネットワークの構築と運用を通じて、システムの信頼性とセキュリティを確保する職種です。業務内容は、「ネットワークの設計・構築」と「ネットワークの運用・保守」の2つに分けられます。

プロジェクトの規模によっては、設計から保守までの一連の工程を一人で担当することもあり、幅広い専門知識と柔軟性が求められる職種です。ネットワークエンジニアの働きにより、システムが安定して稼働する環境が維持されます。

ソフトウェア開発を担当する職種

次に、ソフトウェア開発を担当する主な職種を解説します。

ソフトウェアアーキテクト:システム構造の設計者

ソフトウェアアーキテクトは、ソフトウェア開発の上流工程を担う職種であり、システム全体の構造を設計します。この役割では、要件定義からコーディングまでの開発プロセス全体を把握し、プロジェクの方向性を定めることが求められます。

システム構造の設計の際は、セキュリティやデータ管理、パフォーマンスなど多方面に配慮し、最適なシステム構造を構築することが重要です。また、開発チーム全体をリードしながら、技術的な課題解決にも取り組む役割を果たします。

プロジェクトマネージャー:進行と品質管理の責任者

プロジェクトマネージャーは、ソフトウェア開発全体の進行管理を担う職種です。この役割では、開発プロジェクトを円滑に進められるよう、スケジュールの調整やリソースの配分などを行い、開発チームを統率します。

また、予期せぬリスクにも柔軟に対応し、品質を確保するためのチェック体制を構築することも求められます。プロジェクトの成功には、計画性と柔軟性を兼ね備えたマネジメントスキルが求められます。

データサイエンティスト:データの活用のスペシャリスト

データサイエンティストは、膨大なデータを分析し、機能改善やビジネス上の意思決定に支援する職種です。データを安全に取り扱いながら、効率的な分析手法を導入することで、品質向上や業務の最適化を目指します。

近年、データサイエンティストの需要が高まっており、今後もさらなる活躍が期待されています。

システム開発とソフトウェア開発の導入基準

自社の業務全体を見直すべきか、一部機能の拡張で対応するのかといった視点は、システム開発とソフトウェア開発のどちらを選ぶか判断する上で重要なポイントです。ここからは、システム開発とソフトウェア開発の導入基準を解説します。

業務改革や将来の拡張を見据えるなら「システム開発」

システム開発は、業務の抜本的な改革や将来の拡張を見据えた開発手法です。業務の自動化を目的としたシステムを構築することで、ルーティン作業(繰り返し行う定型業務)の効率化や生産性の向上、ビッグデータの管理・分析が可能になります。

また、システム開発を通じて人的ミスを軽減し、業務の精度や安定性も向上させることができます。これらの業務改善は、長期的な視点では顧客体験の向上や市場競争力の強化、新たなビジネス展開などの可能性をもたらします。

費用や期間を抑えるなら「ソフトウェア導入」

ソフトウェア開発は、システム開発と比べて予算や工期を抑えやすい開発手法です。設計段階での変更や開発後の仕様調整にも柔軟に対応できるため、現行システムのニーズに合わせたカスタマイズがしやすいメリットがあります。

また、メンテナンスにかかる費用や労力も比較的少ないので負担が少なく、継続的な負荷が軽減される点も強みです。大規模な変革は不要なものの、現行システムの機能を拡張したい場合に向いています。

まとめ

今回は、システムとソフトウェアの違いや開発の流れ、それぞれの開発に関わる職種、導入時の判断基準について解説しました。システム開発はハードウェアやネットワーク、データベースを含めた大がかりな構築を行うため、長期的な視点での運用や保守を前提とした大規模な改革につながります。

一方、ソフトウェア開発はコンピューター内部のプログラム単位での実装が中心なので、費用や期間を抑えながら開発できる点が特徴です。どちらを選択すべきかは、企業が抱える課題や経営戦略、コストと期間、さらには自動化の範囲など、多面的な視点から検討することが重要になります。

この記事のまとめ
  • システム開発は大規模な自社改革を視野に、ハードウェア選定からネットワーク、セキュリティまでを一括で構築する手法
  • ソフトウェア開発はプログラム単位で開発でき、費用や期間を抑えやすい手法
  • 自社の将来像や課題に合わせて、最適な開発手法を選択することが重要になる
記事の監修

代表取締役村越 聖人

代表取締役村越 聖人

2006年からエンジニアにてデジタル業界でのキャリアをスタート。
大小様々なWebシステム開発およびシステム運用保守を経験。

フルスタックエンジニアとして上流から下流工程まで一連の業務を担当するとともに、サーバー設計、構築、運用設計などのサーバー管理者業務も兼任。

近年は、顧客折衝を含む提案型営業からDMP絡みのデータ分析業務をはじめ、プロジェクトの全体統括・SEなど業務要件に合わせたポジショニングで顧客ニーズの最大化を図るサービス提案を実施。

新規事業で立ち上げた自社サービスにて、発明者として特許取得。

2019年5月 株式会社glorious future 設立。